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■事前抄録/KDM40周年記念発表会


■ご挨拶   松田光正(大会長)
1982年に添島義和先生のもとで始まったKDMも令和4年には40周年を迎えます。発足当時からの会員は数える程に なりましたが若い世代の会員も増え、経過観察をふまえた活発なディスカッションを変わることなく繰り返してきま した。人生100年時代といわれる昨今ですが、今回は「高齢社会とどう向き合うか」を大きなテーマに据えてみました。 咬合育成期から欠損補綴期まで各ライフステージで私たち開業歯科医がどう関わって行くべきかについて模索してみました。 そしてもう一つのKDMの特徴である臨床統計についてこれまでの研究成果とこれからの展望について発表を予定しています。 コロナ禍の中、熊本地震からも着々と復興を遂げてきた熊本城のもと、沢山の方々と直接会場でディスカッションが できることを願ってやみません。
■セクション1  「KDMで取り組んだ臨床統計」   座長:林康博
歯科臨床で最も重要なことは症例を完結させ、それを長期に渡って経過観察していくことである。しかし、 決してそれだけで結論を導き出すことはできない。人間はイメージで物事を捉える傾向があるが、 それを数値で見て行くと意外にそれまで持っていたイメージと異なる結果になることが少なからずあるからだ。 そこで「症例発表」と「数値」、この二つで検証していくことが歯科医学の発展に必須なことであると考えている。 KDMは、25年ほど前から牛島隆先生を中心として「数値」で症例を見ていく「臨床統計」に取り組んできた。 今でもその流れは脈々と引き継がれている。しかし、数値で出せば絶対に正しいかと言うと決してそうではなく、 数値が出てくるまでの「過程の検証」が非常に重要になってくる。 この点も踏まえて、もう一度これまでKDMが行ってきた臨床統計についてご紹介したい。
■セクション2 「将来難症例を作らないための永久歯列完成への取り組み」 座長:出口大平
近年社会の高齢化が懸念されているが、その流れは今後もより一層拍車がかかると考えられる。 平均余命が延伸されることで欠損を抱えてからの期間が長くなり、われわれが難症例化した欠損歯列と向き合う期間も 自ずと長くなってしまうということになる。例会における症例報告でも特に議論が白熱し、術者や患者ともに望ましくない 経過をたどる症例がある。それは咬合高径が低下したものやすれ違い咬合などのいわゆる「難症例」といわれるものである。 そこで小児期の歯列の安定を図ることが安定した永久歯列の完成につながり、将来の欠損が生じても難症例化させない重要 な予防処置につながると考える。今回は小児期の不正咬合に対して様々なアプローチを行い改善した症例と、成人になってから 介入した症例を提示させていただき検証してみたい。
■セクション3  「歯周病罹患歯の保存により歯列や咬合の安定を図る」   座長:東克章
2018年6月にアメリカ歯周病学会(AAP)、ヨーロッパ歯周病連盟(EFP)より歯周病の新分類が公表された。 疾患の重症度を表すステージ分類によると、ステージⅠが初期、ステージⅡが中等度、ステージⅢが重度、ステージⅣが 進行性の歯周炎となっている。ステージⅠとⅡは歯科衛生士が治療できるが、ステージⅢになると将来歯の喪失リスクが 高くなるため、歯周外科治療や再生療法を行う必要がある。また、ステージⅣになると歯列や咬合が崩壊するのを防ぐ 目的で一次固定や二次固定を行うことが多くなる。このセクションではまずステージⅢ、ステージⅣおける歯周外科治療と 再生療法、そして一次固定と二次固定により治療を行った症例を提示する。さらに少数歯残存症例における移植歯を支台 として活用した症例を報告し、最後に一次固定の意義と設計原則について解説し、「歯牙」つまり「歯根膜」を残す意義 を問い直したい。
■セクション4 「KDMが考える欠損歯列と欠損補綴への取り組み」   座長:永田省藏
欠損補綴の臨床では欠損が拡大する過程であるステージに差し掛かると歯列の転換点となる。具体的には、臼歯部の咬合 崩壊が進み、支持力の不足により、その歪みが上顎前歯群に現れる段階である。特に前歯群の防波堤にあたる上顎犬歯の 存在意義は大きく、仮に犬歯を失う事になれば、上顎前歯は危機に直面することになる。以後はさらに欠損が拡大し、 上顎前歯を失うと歯列の均衡は極端に悪化し、欠損の進行スピードは速まり、場合によっては、いわゆる難症例に移行して しまう例も少なくない、そのような悪いコースに陥らせないためには、歯列を改変する対策が必要であるが、歯列の対称 性を意識し、上下顎の対向関係を改善することが、予後の安定に繋がると考えている。歯列の支持体制をより強固に高め ることよりも、偏った負荷を少なくすることや無理のない対向関係を構築することで長期に咀嚼を維持させていく体制を 求めることが大切ではないだろうか。